TeX Live を使わずに LaTeX 環境を作る!

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TinyTeX を使って R 環境以外でも \(\LaTeX\) を使えるようにしよう!

公開

2024年5月20日

最終更新

2024年6月23日

はじめに

こんにちは、Windows ユーザーです。

TeX Live はインストールするのが面倒だし、使い方もよくわからないので1、別の方法で\(\LaTeX\) を使えるようにしました。

また、Mac での方法も併せてご紹介します。

これまで TeX Live に苦労していた方や Overleaf を使っていた方は、ぜひ試してみてください。

作業手順

前提として、VSCodeはインストールされているとします。もしまだの方はこちらを参考にインストールしてください2

0. WSL, Ubuntu と Homebrew の準備

Windows のローカルでもできるとは思うのですが、Ubuntu でやる方が楽なので、WSL2 を使って Ubuntu でやります。何言ってるかわからない方は、気にしないでください。僕もよくわかりません。

事前準備は少し面倒だけど、一度やってしまえば楽、みたいなイメージで使っています。とりあえず使えればよいと思っている一大学院生なので、そのあたりは許してください。

Mac の方は、Homebrew を使って TinyTeX をインストールしていきます。

既にこれらの準備が出来ている方は、飛ばしてください。

0-1. WSL と Ubuntu のインストール(Windows)

まずは Windows Subsystem for Linux(WSL)をインストールします3

PowerShell を管理者権限で起動4し、以下のコマンドを実行します。

wsl --install

もし再起動を求められたら、再起動してください。インストールはこれだけです。

インストールができたらユーザー名とパスワードの設定が求められるので、設定します。

これは何でも構いません。sudo コマンドを使う際にパスワードが必要になりますが、本当に簡単なもので大丈夫です5

また、パスワード入力の際に、入力しても画面上には表示されませんが、きちんと入力されていますので慌てず続けてください。

0-2. Homebrew のインストール(Mac)

Mac ユーザーは Homebrew を使って諸々インストールしていくので、まだの方はここでインストールしてください。

  1. ターミナルを開く

    • アプリ一覧から「ターミナル」を探してください。
  2. 以下のコマンドを入力して実行

    • パスワードを求められるので、入力してください。
Terminal
/bin/bash -c "$(curl -fsSL https://raw.githubusercontent.com/Homebrew/install/HEAD/install.sh)"

1. TinyTeX のインストール

TeX Live はインストールが面倒なので、TinyTeX という軽量な \(\LaTeX\) ディストリビューションを使います。R Markdown でもよく使われているので、馴染みがある方も多いかもしれません。

しかし今回は、R は使いません。目標とするのは TeX Live の代替として、簡潔に \(\LaTeX\) を使えるようにすることです。

1-1. Windows でのインストール

Windows では、Ubuntu を開いて以下のコマンドを実行します。

wget -qO- "https://yihui.org/tinytex/install-bin-unix.sh" | sh

これで TinyTeX のインストールは完了です。簡単ですね。

1-2. Mac でのインストール

Mac の方は、ターミナルを開いて以下のコマンドを実行してください。

curl -sL "https://yihui.org/tinytex/install-bin-unix.sh" | sh

2. VSCode での設定

2-1. 拡張機能のインストール

VSCode で LaTeX を使うためには、拡張機能をインストールする必要があります。

画面左の拡張機能アイコン をクリックし、検索バーに「LaTeX」と入力します。すると、LaTeX および LaTeX Workshop という拡張機能が表示されるので、2つをインストールします6

2-2. 設定の変更

拡張機能をインストールしたら、設定を変更します。

画面左下の管理ボタンから「設定」で設定画面を開き7、右上にある をクリックして settings.json を開きます。

以下の {} の中身を設定に追加します。もし既に何か設定がある場合は、最後をカンマで区切り、改行して追加してください。

{
    "latex-workshop.latex.tools": [
        {
          "name": "latexmk",
          "command": "latexmk",
          "args": [
            "-synctex=1",
            "-interaction=nonstopmode",
            "-file-line-error",
            "-xelatex",
            "%DOC%"
          ]
        }
    ],
    "latex-workshop.latex.recipes": [
        {
          "name": "latexmk (xelatex)",
          "tools": [
            "latexmk"
          ]
        }
    ],
    "latex-workshop.view.pdf.viewer": "tab",
    "latex-workshop.latex.clean.fileTypes": [
        "*.aux", "*.bbl", "*.blg", "*.idx", "*.ind", "*.lof", "*.lot", "*.out", "*.toc", "*.acn", 
        "*.acr", "*.alg", "*.glg", "*.glo", "*.gls", "*.ist", "*.fls", "*.log", "*.fdb_latexmk", "*.synctex.gz",
        // for Beamer files
        "_minted*", "*.nav", "*.snm", "*.vrb",
    ],
    "latex-workshop.latex.autoBuild.run": "onBuilt",
}

これで設定は完了です。

3. 動作確認

ここからは Windows も Mac も共通です。

はじめに今回使うフォントをインストールしましょう。VSCode のターミナルで以下のコマンドを実行してください。

tlmgr install ipaex

次に、VSCode で新しいファイルを作成し、GitHub Copilot が作ってくれた以下のコードを回してみます8

\documentclass{article}
\usepackage{bookmark} 
\usepackage{fontspec} 
\usepackage{zxjatype} 
\usepackage[ipaex]{zxjafont}

\title{サンプルドキュメント}
\author{あなたの名前}
\date{今日の日付}

\begin{document}

\maketitle

\section{導入}

これはサンプルのセクションです。

\subsection{サブセクション}

これはサンプルのサブセクションです。

\end{document}

これを保存し、右上の緑の三角ボタン をクリックすると、PDF ファイルが生成されます。

しかし、おそらくここでエラーに直面するでしょう。次のセクションでエラーの解決法について説明します。

4. エラーの解決

この段階のエラーのほとんどは、パッケージがインストールされていないことが原因です。

コンパイルすると右下にエラーの表記とともに「Open compiler log」と出ると思うので、それをクリックしてエラーログを開きます。

これを押します。

エラーログを少し遡ってみると、どのパッケージがインストールされていないかがわかります。例えば、「! LaTeX Error: File ‘xltxtra.sty’ not found.」と出た場合、xltxtra パッケージがインストールされていないことがわかります。

その場合、ターミナルに戻り以下のコマンドを実行してください。

tlmgr install xltxtra

これでインストールできますが、使い始めのうちは何度か似たようなエラーが出るかもしれません。エラーが出たらエラーログを見て、同様の方法で必要なパッケージをインストールしてください。

エラーのトラップ

先ほどのサンプルコードを実行しようとすると、

! LaTeX Error: File `xeCJK.sty’ not found.

というエラーが途中で出てきます。しかし、tlmgr install xeCJK としてもインストールできません。これは、xeCJK というパッケージが存在しないためです。

代わりに、ctex パッケージをインストールすることで解決できます。ctex パッケージが xeCJK を含んでいるためです。

ややこしいですが、これで試してみてください。

5. 再び動作確認

エラーを解消するうちに、足りないパッケージがインストールでき、最終的には問題なくコンパイルできるようになるはずです。

日本語で使う場合、フォントをインストールしていないミスが多いので、気を付けてください。

最終的に次のように出力できました。

おわりに

以上で、TeX Live を使わずに \(\LaTeX\) 環境を作る方法を紹介しました。

TinyTeX は、R 上だと必要なパッケージが自動でインストールされる9ので、それに比べるとやや不便ですが、簡潔に \(\LaTeX\) を使えるようになるので、一度試してみる価値はあると思います。

TeX Live や VSCode の設定に苦心している方は、ぜひ試してみてください。

また、何かエラー等ありましたらコメントでお知らせください。

参考

  1. 実際には少し使っていたので、並程度には使えます(笑)↩︎

  2. 日本語設定などもしておくと便利かもしれません↩︎

  3. Windows における WSL のインストールについてはこちらでも触れています。↩︎

  4. アプリ一覧から右クリックすれば「詳細」→「管理者として実行」で使えます。↩︎

  5. こちらの動画の 4:42~ あたりを見てみてください。パスワードは「a」です。a。↩︎

  6. 怪しかったら、mathematic.vscode-latexJames-Yu.latex-workshop をそれぞれ入力すれば確実です。↩︎

  7. Windowsなら Ctrl, で、Mac ならcommand, でもいけます。↩︎

  8. 少し日本語フォントなどの設定を加えています。↩︎

  9. その割によく手動でインストールさせられる気がしますが…↩︎